Weekly Matsuoty 2003/07/08
釣った魚にとことんエサをあげる
 
私は某外資系生命保険に入っている。5-6年 ほど前に、大学のゼミの先輩がライフ・プラ ンナー(要は営業)となったことから、日系 の保険会社から切り替えたものだ。

保険内容には特に不満はない。しかし、く だんのライフ・プランナー氏とのコミュニ ケーションは、印刷された年賀状だけ。し かも一言の手書きのコメントさえなかった。

そして、1年ほど前、別の事業立ち上げで独 立の案内をもらった時、彼の取扱商品の注文 書も同封されていたが、私はためらいもなく ゴミ箱に捨てた。もし、年賀状に一言でも肉 筆のコメントが書かれていれば、おそらく私 は独立祝いに商品を購入したと思う。(せい ぜい数千円の品)

彼がライフ・プランナーを辞めた理由は聞い ていないが、おそらく限界を感じたのだと推 測している。彼の既存客フォローのやり方で はまず紹介やクチコミを得ることができない のは明らかであり、毎年毎年、新規獲得に苦 労し続けるのに疲れたのだろう・・・

さて、いまさら言うまでもなく、CRMの基本 的な考え方は、獲得した顧客をきっちりフォ ローすることによって、顧客生涯価値におけ るシェアを高めようとすることである。ただ、 これをお題目だけではなく、現場に徹底させ るのは簡単ではない。逆に、実行を確実にで きるところは、持続的な成長を続けることが 可能だ。

住宅リフォーム会社「ホームテック」は、設 立98年、まだ5年の若い会社だが、成長率は 毎年200-300%、年商は直近で44億円に達す る。

彼らの強みは徹底した既存客フォローだ。 リフォーム後の10年間保証を口先だけでなく、 半年毎の定期点検によって徹底している。 大事な点は、顧客宅を半年に一回訪問し、点 検した後に顧客から点検完了の確認印をもら うシートがあることだ。そのシートには、20 個の印鑑を押す場所がある。これで、10年間 定期点検を確実に実行する仕組みになってい る。また、担当者は、並行して毎月1回、既存 客の家に立ち寄ることを仕組み化している。 これは、営業ではなく、単なる挨拶回りであ る。上記以外にも、ホームテックは、様々な 既存客向けのイベントやサービスを実施して いる。

こうした「釣った魚にとことんエサをあげる」 ことにより、ホームテックの売上げの実に75 %が、リピートと紹介によるものだと言う。 立ち上げ当初は顧客フォローのためのコスト がかさみ、大変だったかも知れないが、今は、 非効率な新規開拓営業をほとんどやることも なく、既存客へのサービスと気楽な与太話を していれば、仕事が勝手にやってくる、ほぼ そんな状況になっていると思われる。

「経営は実行」(が大事)という本があるが やはり「CRMも実行」である。

*ホームテックの事例は、「小さな会社・ 儲けのルール」の著者、栢野克己氏のお話 を参考にさせていただきました。
 
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