Weekly Matsuoty 2000/12/21
ソフト・システムズ方法論-基本定義
 
 リエンジニアリングやERPの専門家であるトーマス・ダベンポート氏は、先ごろ来日し、「ミッション・クリティカル」の日本語版出版を記念する講演を行った。彼の講演の中で気になったエピソードをまず紹介したい。

 ダベンポート氏がアメリカン航空の担当者と話をしていた時、担当者が、「アメリカン航空では、‘AIRPORT’という言葉には12個の異なる意味がある」と言ったという。例えば、旅客担当者にとっては、空港は乗客を乗降させる場所であるが、航空荷物を担当する社員にとって、空港とは荷物を出し入れする場所である等々。ここでの「意味」とは、言葉自体の意味ではなく、各社員にとっての重要な関心事項、あるいは意義のことである。

 このエピソードで何が言いたいかというと、

一つの言葉が、担当部署が異なるとその捉え方も異なってくることが、全社的な情報システムの開発といった大規模プロジェクトの推進において障害になりがちである、ということだ。

 同じ会社の社員であっても心は決してひとつではない。営業部門と経理部門、あるいは顧客サービス部門といった部署が対立しがちなのは、それぞれの部署における、例えば「顧客」、あるいは「売上」といった日常的な言葉でさえ、その意味づけ、すなわち捉え方が異なるからである。

 したがって、全社の統合情報システム(エンタープライズ・システム)あるいは、CRMの導入といった、部門横断的な大規模プロジェクトでは、まず言葉の定義の統一をはじめとする、意識合わせから入ることが原則である。(最初にこれをやらなかった場合、途中で必ず行き詰まり、出発点まで戻ってやり直すことになる。)

 ソフトシステムズ方法論は、このような困難度の高いプロジェクトに有効な方法である。プロジェクトを進めるためのプランニング段階において、プロジェクトの定義・チェックを行うツールを提供してくれるからだ。

 そこで今回は、今回は、いくつかのツールの中から、「XYZ公式」を簡単に紹介する。これは、プロジェクトをなんらかの仕組み=システムを実現するもの、という前提で、そのシステムを次のように定義すること、すなわち基本定義を定める方法である。

システムを次のような形式で定義する。

Zのために、Yによって、Xする活動(システム)

ここで、

  Zでは、システムの「目的」を定義する
  Yでは、「方法」を定義する
  Xでは、具体的な「活動」を定義する

例えば全社CRM導入で定義してみると、

  Z:顧客生涯価値を最大化するために、

  Y:各種コミュニケーションツールを活用して

  X:顧客との統合化された継続的なコミュニケーションを行う活動

となる。

 一見簡単に見える定義だが、実際に複雑なプロジェクトでは結構苦労する。メンバーの思惑がそれぞれ異なるからである。実は、この基本定義作成過程そのものが、意識合わせを実現する仕組みでもある。

 さて、次回紹介する「CATWOE分析」はこの基本定義の妥当性、有効性を吟味するツールである。「CATWOE分析」によって、プロジェクトはより明快になる。そうすれば、具体的なアクションプランに落とし込むのは難しいことではないはずだ。
 
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