Weekly Matsuoty 2000/02/21
BEHAVIOR IS KING
 
 「行動こそ(顧客データの)王様である」

 Don Peppers氏の言葉である。

 顧客アンケートに、趣味嗜好、好き嫌いといった項目を入れ、態度・感情に関するデータを収集しても、実際の購買行動とは、ずれがあり、あまり使えないのが現実である。「この製品を好きだからといって、その製品を買う」とは限らない、ということだ。

 したがって、企業側は、顧客の態度・感情に関するデータだけでなく、実際の購買行動に関する情報を収集し、「行動」に基づく判断、具体的には製品開発・改良、プライシング、関連製品の紹介(クロスセリング)、プロモーション手法といった各種マーケティング要素を決定することが必要となってくる。

 人は過去に取った行動を高い確率で繰り返す。まったく新しい製品を買う確率よりも、以前購入経験のある製品を買う確率が高い。なぜなら、既にその製品を経験済みであり、価格対便益の妥当性をわかっているからである。すなわち、以前取り上げた「考えるコスト」「知覚コスト」が低くなっているからである。

 「行動こそ、(顧客データの)王様である」というのは、行動データが最もマーケティング上の判断に役に立つ、使える、ということを意味している。

 「じゃあ、例えば去年スノボーを買ったお客には、今年もスノボーの新製品を紹介すると言うこと?」を思う方がいるだろう。

 率直に言わせてもらうと、こんなに単純ではない。なぜならニーズは変化するし、行動もそれに合わせて変化するからだ。去年スノボーにはまっていた人が今年はショートスキーにはまっているかもしれないのだ。

 行動データは顧客を理解するために最も頼りになるものだが、「行動」自体にとらわれてはいけないのである。様々な行動をつなぎ合わせてみることによって、一定の「行動パターン」、あるいは、その人の行動傾向を把握できるようにデータを分析する必要がある。

 「スノボーをやっている顧客」と言うだけにとどまるのではなく、「ウインタースポーツが好きで新しいものに飛びつく傾向が高い顧客」というセグメンテーションを見出すべきなのである。

 購買行動は、たとえ衝動買いであったとしてもなんらかの理性的判断があって起こされる。「買おう」という意思決定がなければ「買う」という行動には移らない。食欲のような本能行動とは違う。

 何が言いたいかというと、行動には必ずそれに影響を与えるその人固有の考え方や習慣が存在しているということであり、それを見出すことによって、顧客の将来の購買行動を予測する精度が高くなるのである。そしてある程度変化するニーズを追いかけることが可能になる。

 行動の背景(あるいは「因子」と読んでも良いだろう)となっているものを分析を通じて発見すること、によって初めて行動データは生きてくる。
 
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