Weekly Matsuoty 2000/02/07
考えるコスト
 
 「考えるコスト」って、たしか似た題名の本があったような・・・。

 さて本題。モノを買うとき、いつも買いなれた缶ジュースだとか、カップラーメンのようなものは、たいてい、条件反射的に買ってしまうことが多いと思う。既にどれが好きか、どれがいい商品かわかっているので、考える必要がない。価格も高いものではないので、万が一不良品だったとしても、あまり気にはならない。

 ところが、家や車、あるいは投資信託のような、高額であったり、仕組みが複雑なものはそんなに簡単に買う決断ができない。本当に自分で納得のいく買い物をしたければ、その買おうとする商品について、とことん事前勉強する必要がある。そうでないと、その商品が価格と比較して妥当な機能、品質を有しているかどうか、判断できないからだ。しかも、高額であるために、例えば、付け焼き刃で勉強して、いいものを選んだつもりでも、実はとんでもない不良品をつかまされたような場合、精神的なダメージがとても大きい。このことを「知覚リスクが高い」という。

 だから失敗する不安を抱えながら、事前勉強に時間を取られ、結局あまり確信の持てない判断をしなければならない高額商品や仕組みの複雑な商品は「考えるコスト」がべらぼうに高いのである。

 できるならこうした「考えるコスト」はなるべく払いたくない、そう考える人にとって頼りになるのが「口コミ」と「ブランド」である。

 前回のWeekly Matsuotyで取り上げた「経験財」も事前に試せないから知覚リスクが高いし、評価が難しいので「考えるコスト」がとても高い。だから、このコストを低減させてくれる有効な手段である、「経験者の評価」つまりは「口コミ」が大切にされるのである。

 では「ブランド」とは何か。基本的には、「あの商品なら間違いない、失敗はない」という安心感、信頼感を商品名から強く想起させることに成功したものである。すなわち、「知覚リスク」を最小限にすることができた商品である。

 もし、ブランド確立に成功した商品が、さらに口コミ効果を最大限に発揮できたら・・・。そう、知覚コストに加えて、「考えるコスト」も最小になる。つまり、この商品がたとえ高額な商品であっても、消費者を躊躇なく購入に向かわせることができるようになる可能性が高くなる。

 インターネットにおいて、「口コミ」(あるいはコミュニティと言ってもいい)と「ブランド」がもっとも注目されるキーワードになっている理由がおわかりになっただろうか?
 
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