Weekly Matsuoty 2004/04/12
感謝レベルを目指す
 
加山雄三氏は、90年から経営していたスキー 場が、バブルの崩壊などにより困難な状況に 陥った時、自分が何をしたいのか、何のため に生きているのかを自分の心に聞いたという。

その結果、歌を歌ったり芝居をしたりするこ との方が、事業経営より大事であり、人を喜 ばせることが自分の「天職」だという気づき を得る。

そして、天職と思うようになってステージに 立つと、不思議なことにお客さんの反応が変 わった。

以前は、コンサートの感想として、「最高」 「良かったですね」と言われていたのが、こ こ10年は、お金を払っている立場なのに、 「ありがとうございました」と感謝されるこ とが増えたという。

さて、このエピソードに関連して、「感動」 についてのある考え方を紹介したい。

‘感動は設計できる’が持論の平野秀典氏 (感動プロデューサー)は、感動の公式を 「期待」と「実感」の関係で説明する。

これは、次のように5段階のレベルがある。

期待>不満 ⇒不満足
期待=実感 ⇒満足
期待<実感 ⇒感動
期待<<実感 ⇒感激
期待<<<実感 ⇒感謝

加山雄三氏のコンサートは、以前は、せいぜ い期待と実感が一致した場合の「満足」か、 期待を実感がある程度上回る「感動」「感 激」レベルだった。

しかし、加山氏がエンタテイナーであること を天職と自覚し、ステージに正面切って真剣 に取り組むようになった時から、顧客にとっ ては、期待を実感が大幅に上回るようになり、 「感謝」せずにいられない、というレベルま で質が向上したのではないだろうか。

「顧客満足」が経営や商品、サービスの品質 を測定する概念として提唱されて久しい。し かし、ただ「満足する」だけでは、必ずしも リピート購入につながる「ロイヤル顧客」に はなりにくいことが実証されており、「顧客 満足」の有効性が疑われている。

しかし、平野氏の考え方によれば、顧客満足 というのは、品質を評価する尺度としては、 低いレベルにしか過ぎないのである。ロイヤ ル顧客の獲得を目指すのであれば、その最高 レベルの「感謝」を目指すべきなのである。

「感謝」レベルへの到達を目指すことは、極 めて高いハードルであるには違いない。しか し、今は、顧客が企業を選択する顧客中心主 義の時代である。「感謝」レベルを目指して 努力する以外に生き残る方法はない。
 
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