Weekly Matsuoty 2001/11/13
相撲部屋の人事戦略
 
 IT業界の雄として最近脚光を浴びている、「フューチャーシステムコンサルティング」の代表取締役社長、金丸恭文氏の話を聞く機会があった。

 同社の事業コンセプトは、“経営戦略とIT戦略を両輪に、ハードウェア、ソフトウェア、通信機器の設計能力を有する技術ノウハウの提供”であり、一言で言えば、「ユーザー側の目利き役を果たすITコンサルティング」である。

 ユーザー側に立つ、ということだから、ベンダーの下請けは一切しない、中立的な立場を維持するという。したがって、ハード・ソフト製品からの利益を一切放棄している。もし、このようなポジションが実際に堅持されているとすれば、企画・提案コンペに連戦連勝という自慢話もあながち誇張ではないのだろうと思える。

 つまり、同社は、IT業界における「購買代理店」であり、どこかのハード・ソフトメーカーの販売代理店ではないということだ。この基本姿勢は、私にとっても理想とするところであり、本来の「ビジネスプロデュース業務」だと思う。

 ところで、こんな会社において成功のカギを握るのは、個人レベルでの高いスキル・経験であり、ことさら組織としての拡大を図ることには疑問を覚えた。(既に同社は350名の社員を抱えている)

 そこで、「ITコンサルティングという業務は一人でやった方が楽だし、儲かると思うのになぜ会社組織としているのか?」という質問をぶつけてみた。

 金丸氏の答えはシンプルだ。

「仕事は一人でやるより仲間たちとやった方が面白いから」

 そう、彼にとっても、仕事は、金儲けが第一の目的ではない。面白おかしく仕事をやること、つまりは、仕事を通じていい人生を送ることなのだ。

 金丸氏は、同社を2人で立ち上げたが、当時、仕事で一番大変だったことは、3人目の社員を見つけることだったそうだ。そして、3人で働いている時に一番大変だったのは、4人目の社員を見つけることだった。結局、社員が20人くらいになるまで、彼は入社して欲しい方の自宅に出向き、家族に会い、両親に会い、会社の夢を語り、入社を納得してもらうことに多くの時間を注いだという。

 金丸氏曰く、これは相撲部屋の親方がやっていることである。将来の横綱の卵がいれば、日本全国どこにでも出向き、両親に頭を下げる。

 企業ブランドや金に釣られただけの社員の集まりに過ぎない大手企業より、「相撲部屋の人事戦略」を実践している企業が圧倒的にに強いのは当然かもしれない。
 
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