Weekly Matsuoty 2001/07/16
自分というブランドのアイデンティティ
 
 最近、いろんな方と‘キャリア’について議論することがますます多くなってきた。もちろんそれは、私自身がキャリアについて強い関心を持っており、つい議論を吹っかけてしまうということなのだが・・・

 さて、一般的なキャリアデザイン論では、5年後、10年後にこうなりたい自分というものを決める、すなわちキャリアのビジョンを描いたり、キャリアゴール(目標)を設定することが重視される。

 確かに、目標がいったん設定されれば、その目標に到達するために必要な行動を明確化し、いつまでにやるのかというスケジュールを組めば良い。あとは、そうして作成した実行計画を着実にこなしていけば、ほぼ間違いなく目標に到達できるだろう。

 だが、そうやって目標が常に明確である人はラッキーである。私も含め、一般的なビジネスパーソンの多くは、目標設定ができなくて悩んでいる。10年後の自分がどうなりたいかよくわからないのである。

 また、過去には目標(たとえ漠然としていたとしても)があったが、とりあえずその目標が達成されてしまった今では、次の目標が見えてこないという場合もある。

 以前、仕事のゴールだけではなく、今やっている仕事が楽しいと思えるかどうかという視点、すなわち「価値観」が大切だと書いたが、この「価値観」も私自身、よくわからなくなることがある。たとえ、現在の仕事が楽しいからといって、それが自分の価値観だと言い切れる自信がない。

 「結局、俺がやりたいのはなんだろう? 今の仕事は楽しいけど、それで良いのかな?」

 キャリアデザインの方法として、どんなに体系的な、システマチックな理論知ったとしても、そもそも自分の将来の理想像や価値観が見えなければ何も始められないのだ。

 ではどうすればいいのか? その答えは簡単ではないのだが、ふと「原点」という言葉が浮かんだ。

 社会の中で「自分」という存在の核となっているもの、それが自分そのものと言えるもの、それが自分の「原点」だ。この原点を自分なりに把握できれば、おそらくキャリアにおける目標や価値観が見えてくるのではないだろうか。

 自分の存在を象徴しているという意味で「原点」とは、自分というブランドの「アイデンティティ」であると言えるだろう。

 そして、自分というブランドのアイデンティティを確立することが、生涯の目標であり、また行動の拠り所となるという点で、価値観につながるのではないか?

 だから、早速、自分の原点を探しに行ってみよう。どこにあるかって?原点というくらいだから、これまでの自分が歩いてきた道をさかのぼることだ。

 つまり、じっくりと自分の過去を振り返って見る。誰もが、生まれてからこれまでそれぞれ固有の経験をしてきている。その中で、これが今の自分を形作る決定的なできごとである、あるいは行動だ、と思えるものがいくつかあるだろう。

 それは、理屈抜きに貴方自身を象徴しており、それ以上さかのぼることはできない。だから原点と言う。その原点は自分というブランドの中心点に座し、あなたのアイデンティティを方向づける。あなた自身の将来も。

 誰にでもきっと「原点」がある。
 
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